
2021年3月にオープンした秋田市文化創造館のオープニング展覧会として開催された、生活と表現が交わる広場としての展覧会「200年をたがやす」に工芸分野のキュレーターとして参画し、企画、展示、トークイベントやワークショップの企画運営、関連する複数のプロジェクトの企画と運用を担当しました。

メイン会場の建築は、2013年に秋田県立美術館としての役目を終え、解体される計画でしたが、市民を中心とした保存運動の末に解体を免れ、耐震工事等を経て、秋田市文化創造館として生まれ変わった公共文化施設。
「200年をたがやす」は、秋田市が文化創造プロジェクトのスタートアップ企画として開催した展覧会で、会期は、過程を公開しながら市民とともに制作する「つくる」と、その成果を広く公開する「みせる」で構成され、食、工芸、生活・産業、美術、舞台の5分野において、地域の文化をたがやす活動を未来へ継承することをコンセプトに開催されました。

戦後、明治維新後、1世紀(100年)などの時間軸で語られるものごとが多い中で、あえて「200年」という幅で、過去に、そして未来へと、様々な旅路であきたを探り、新たに誕生した秋田市文化創造館の目指す未来に呼応すべく計画された展覧会でもありました。
日時:「つくる」2021年3月21日(日)− 6月18日(金)
「みせる」2021年7月1日(木)− 9月26日(日)
会場:秋田市文化創造館ほか
主催:秋田市
企画・制作:NPO法人アーツセンターあきた
全体監修:服部浩之(インディペンデントキュレーター/秋田公立美術大学 特任准教授)
キュレーター:
「生活・産業」尾花賢一(NPO法人アーツセンターあきた)
「食」 矢吹史子(のんびり合同会社)
「工芸」 田宮慎(合同会社casane tsumugu)
「美術」 藤本悠里子(NPO法人アーツセンターあきた)
「舞台」 島崇(NPO法人アーツセンターあきた)
空間設計(建築):海法圭(建築家/株式会社海法圭建築設計事務所)
デザイン:[グラフィック]佐々木俊(株式会社AYOND)/[ウェブ]谷戸正樹(MYDO LLC)
イラスト:丹野杏香
プロジェクトマネジメント:鈴木一絵
※所属・肩書きは展覧会開催時のものです
展覧会の理念と概要は、全体監修の服部浩之氏のテキストを一部引用します。
「土壌をたがやし、他者との親交を深め、新しい物事を生む場所」としての文化創造館を拠点とした展覧会では、特定の分野のみに特化するよりは、通常は同居しないような幅広い活動や表現が集まる場を作りたいと考え、異なる専門性をもつ人々とプロジェクトチームを形成した。生活・産業、食、工芸、美術、舞台という5つの分野を立ち上げ、各分野で独立したプロジェクトを各々展開した。5つの分野の活動は度々交わり、不思議な化学反応を起こすこともある。
(中略)
そしてこの展覧会の大きな特徴に、「つくる」と「みせる」の二会期による構成がある。
「つくる」は、試行錯誤する制作過程を公開し共有する場だ。作品・資料の保存収集や管理と展示公開が主要な活動となる美術館や博物館とは異なり、人々が活動をつくる現場である文化創造館では「つくる」をひらくことにこそ意義がある。つくる現場なので非決定や未解決に溢れる日々で、この期間の全体像は見えづらかったと思う。しかし、つくる環境としてのこの場所の可能性を探求するうえで意義ある日々であった。
そして「みせる」では、「生活と表現が交わる広場としての展覧会」という側面を強く打ち出した。他者と議論を交わすアゴラ、友人とお茶をのみピクニックを楽しむ公園、または酒を交わし対話を重ねるパブ、ときには俗世の雑事から逃れるアジールなど、ヘテロトピアと言えるような様々な人が自由に居られる広場のような展覧会。
美術作品もあれば、食のレシピもある。古い資料があれば、ものづくりに勤しむ人もいる。議論が交わされる隣には人々から手渡された工芸品が集まる。工芸品制作過程の材が多数集合し、アートスペースのアーカイブや研究活動を深める人がおり、伝統芸能の調査や記録が公開され、舞台公演が起こる。施設内はどこも飲食が可能で、美術作品のすぐそばにはブランコが設置され、巨大空間を斜めに切り裂く2.5階の仮設階段が出現する。作品だけでなく、ものや装置、空間の設え、そして人が混在する。ここでどう過ごすかは、来訪者におおくが委ねられている。もちろん展示物を鑑賞するもよし、ワークショップに参加したり、工作をしてもよい。あるいはブランコに佇み、机で勉強をしたりご飯を食べたり、ただ寝転がりのんびり過ごすもよいだろう。なにか私たちでは思いつかないような使い方、遊び方を発見してくれる来訪者が生まれることを期待する。
(中略)
かつてヨーゼフ・ボイスは「すべての人は芸術家である」と表明したが、これを真正面から受け止め、誰もが滞在し創作が可能なシチズン・イン・レジデンスとでも言えるような場所に文化創造館が育ってほしいのだ。文化(や芸術)の生産者は誰か、真剣に問い直す時期だと思うし、新たな態度を表明する場所が待ち望まれている。「200年をたがやす」は、このような地盤を少しずつたがやし、土壌を肥やす第一歩である。
担当した工芸分野では、「森から暮らしへ 〜つかう みがく つなぐ おもいで〜」というテーマを掲げ、県庁所在地である秋田市、旧県立美術館であった文脈などから、秋田県の4つの国指定伝統的工芸品に焦点をあて、長年暮らしの中に息づいてきた伝統的工芸品を「暮らし」「記憶」「経年変化」などの観点から、あらためて材料や製造工程、物語とともに紹介し、未来の使い手との幸せな関係の発見を目指しました。




前期の「つくる」期間で「秋田の伝統的工芸品にまつわるエピソード」を広く募集し、後期の「みせる」期間で展示し、伝統工芸品は、地域の風土や歴史的背景の影響を多分に受けた「モノ」であり、人の手で作られるからこそ、経年変化や修繕などを経てながく使い続けることができる暮らしの道具でもあり、使い手と共に刻んだ時間の分だけ、記憶や物語が宿る、単なる「モノ」や「道具」を超えた存在になることを表現しました。





また、会期中には、4つの伝統工芸すべてのトークイベント、参加型ワークショップを企画・開催したほか、「押入れに眠る秋田の伝統的工芸品」と銘打ったプロジェクトを展開。家庭の押入れに眠る使われなくなった伝統的工芸品を市民から募集、会場に展示し、会期終盤に「未来の使い手オーディション」をイベントとして開催。使うことで魅力が増していく秋田の伝統的工芸品を、多くの新たな使い手へとバトンをつなぐことが出来ました。




幼少期を過ごした秋田市の象徴とも言える建築物が生まれ変わる第一歩に携われたことを、とても嬉しく思います。ご来場いただいた皆さま、ご協力いただいた関係者の皆さまにも、あらためて心から感謝申し上げます。また、ここから、新たな世代の記憶に刻まれる「場」となっていくことを願っています。
【展示上映動画】※Youtube「200年をたがやす」
Planning&Interviewer:casane tsumugu
Shooting Direction:casane tsumugu
Videographer:Yoma Funabashi
【参考】
Discover Japan WEB記事
https://discoverjapan-web.com/article/69028
|Credit|
Curation[Crafts]:Makoto Tamiya/casane tsumugu
Exhibition Planning:casane tsumugu
Exhibition Space Design:Kei Kaihoh & casane tsumugu
Installer:Arts Center Akita & casane tsumugu
Graphic Design:casane tsumugu
Event & Workshop Planning:casane tsumugu
Photo:Yu Kusanagi
CL=NPO法人アーツセンターあきた
